神様のドングリ- メフィスの栄華 -

はじめて読む方は神様のどんぐり- はじまり -からお読みください。

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神様のドングリ- 予言の兆し その3 -からの続き。

孤独な狐、タイラーがマモリギから世界の危機を知らされる一方で、この世の栄華を誇るものもいます。

岩窟の王者メフィスは大きな隆々たる筋骨を誇り、その虎縞の肌は雄々しく艶めいています。

元々、王者の貫録を持つ虎ではありましたが、神様のドングリをうまく活用して動物たちを支配し、益々にその威を強くしているようです。

メフィスの天下はこのまま続いてゆくのでしょうか。

・・・ ◇◆ メフィスの栄華 ◆◇ ・・・

かつて、剣のような鋭い岩石に覆われた、足場の悪かったメフィスの根城。

要塞のように人を寄せ付けぬ、孤高なものが巣食う場所として知られていたことが、まるで嘘のように今は、賑やかで華やいでいます。

根城の岩窟は大きく改良されて、今は、一国の城を思わせる立派な建物に変わっています。

岩場はならされて、平になり、そこには市場のように立ち並ぶお店が活気づいています。

さながら城下町といったところでしょうか。

動物たちも沢山集まってきています。

城下町を抜けて、かつての岩窟の城の中には煌びやかな装飾が施されています。

以前の殺風景な岩窟とはまるで違います。

メフィスは神様のドングリを動物たちに集めさせ、その神様のドングリを使って、今までは手の届かなかった遠くのテリトリーの動物の里と交易を持つようになっていました。

自分の獰猛さを背景に恐怖支配をするだけでは、大きな実権を握ることはできない。

そう考えたメフィスは、神様のドングリを他の動物の里にも普及させていったのです。

何しろ神様のドングリの多くはメフィスが集めて掌握しています。

後は、神様のドングリに魅了させて、神様のドングリがなければ、取引も生活も成り立たなくさせてしまえば、こちらのものです。

黙っていてもメフィスに他の動物たちはかしずいてくるのです。

メフィスは城のまさに玉座とも呼ぶべき一番奥の間に座り、独り満足げに笑っています。

その周りには、他の里の各代表となる村長や長老にあたる動物が取り巻いています。

「メフィス様、ご機嫌麗しゅうございます。お近づきのしるしにどうぞお納めください」

大きな髭を蓄えた、初老の山猫が恭しく、箱に入ったキラキラした珍しい貝殻でつくられた装飾品を差し出しました。

山猫の里の村長のようです。

「折角だ。もらっておこう。だが・・」

メフィスは鋭い眼を吊り上げて、献上物を一瞥し、つまらないものをのけるかのように従事係りの動物にどこかに持ってくように指示しました。

「如何なる装飾品よりも価値のあるものがある。何かわかるか?」

「もちろん、それは神様のドングリでございましょう!」

横から割り込むように、おべっかを言うのは、毛皮が白髪交じりの狸です。

どうやら、こちらは狸の里の長老のようです。

他の取り巻く動物たちもそのおべっかに乗るように口々に神様のドングリをたたえています。

それを見て、メフィスもまんざらでもない顔をしています。

山猫の里の村長は、メフィスの機嫌を取るチャンスを狸の長老に横取りされた形となり憮然としています。

そんな山猫の里の村長の心中など関係なく、メフィスを取り巻く動物たちが、自分の里に優位に神様のドングリが回ってくることを何とか取り付けようと必死にアピール合戦が始まりました。

しばらく、ワイワイとメフィスの周りで賑やかな空気が流れていました。

しかし、メフィスの横に従事の狸がそそくさと寄ってきて、何かを耳打ちします。

タイラーに担がれて神様のドングリを最初に探し始めたあの狸です。

メフィスは、ぎろりと狸をにらむと、何かを指示しています。

指示された狸は、いそいそと、退散します。

「動物たち諸君!少し雑事が入った。そのままでしばし、お待ち頂けるかな?」

メフィスの突然の物言いにも誰も文句を言うものはありません。

一瞬で静まり返った動物たちは、何事が始まるのかと固唾をのんでメフィスを見つめています。

すると先ほどの狸が一匹の疲れきった顔をしてうなだれた兎を連れて戻ってきました。

兎は、マモリギを打ち倒す計画を立てた、あの兎です。

「皆に紹介しよう!彼こそは、あの世界を守ると言い伝えられる大樹であるマモリギを打ち倒すべく立ち上がった勇者である」

メフィスは何か含みのある笑みを浮かべながら、少し意地悪い感じの口調で、取り巻く動物たちに言いました。

動物たちの目線が一斉に兎に注視されて、顔色の悪い兎の表情は益々に青くなり、一層、うなだれています。

「さあ!君の武勇伝を聞かせてくれたまえ」

益々に意地悪な口調でメフィスは言いました。

メフィスは既にマモリギを打ち倒す計画が失敗したことを知っていました。

事の経緯は全て、メフィスの耳に入るようになっているのです。

兎は何も言えず、喘ぐように「メフィス様、そ、その、、」と何かを発するとそれを遮るようにメフィスは言いました。

「たわけが!失敗したのであろう。」

今度はいつも通りの獰猛な咆哮にも似た声でメフィスは兎を罵倒するように言いました。

兎は、わなわなと身体を振るわせ、縮み上がって何も言うことができません。

「たかが山猫一匹の妨害で吾輩の顔に泥を塗るとは、お前は随分とえらい身分になったものよ」

山猫の下りのところで、メフィスは山猫の里の村長を一瞥して、再び、兎の方へ鋭い眼光を戻します。

山猫の里の村長は、嫌な汗をかきつつ、自分の方にメフィスの怒りの矛先が向いてこないか気が気でない様子です。

「も、申し訳ありません。。次こそは!必ずご期待に応えてみせます!」

何とか、言葉を紡いでメフィスに取り入ろうと兎は言いました。

「次だと?お前に次があると思うなよ。吾輩の側近に無力で無能なものはいらぬ!」

そう叫ぶとメフィスは、従事する狸に眼で合図しました。

狸は無言で、兎の首根っこを掴むと城の出口へと引きずっていきます。

「おい!痛いじゃないか!?やめろよ。な?友達だろ??」

哀願するように兎は狸に友情を訴えかけますが、狸の兎に対する目線は冷たいものでした。

「やっちまったなお前。せいぜい、俺はお前の分までメフィス様の元で出世していくつもりだ」

狸はそう言い捨てると兎を城から叩き出したのでした。


・・・続く


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神様のドングリ- 予言の兆し その3 -

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神様のドングリ- 予言の兆し その2 -からの続き。

マモリギから世界の終りが近づいていることを告げられるタイラー。

しかし、どうしても、マモリギが語る話をにわかには受け入れることが出来ません。

マモリギはテルメアの実が不足すると力を出すことが出来ず世界の調和を維持できないというのです。

そして、そのテルメアの実とはタイラーが神様のドングリと偽った、あの黄色く腐食したこの実であることを告げられて、またもやタイラーは自分自身の犯した罪を突きつけられるような気持ちになるのでした。

・・・ ◇◆ 予言の兆し その3 ◆◇ ・・・

タイラーはマモリギからテルメアの実の正体が神様のドングリであることを告げられて固まってしまいました。

こんなところでも、また、その名を聴くことになるとは思いもよらなかったのです。

マモリギの言い分によれば、神様のドングリことテルメアの実が失われた時にマモリギの力が失われて、世界の調和が崩れ去る時だということになります。

・・そうなれば、やはり、それも自分のせいなのか?

と予想以上の問題の発展に頭を抱えるタイラーなのでした。


タイラーよ

お前が神様のドングリと名付けたテルメアの実を取り戻しなさい

猶予はあまりありません

わたしにはもう大地を支え続けるだけの力が残されていません

急ぐのです


マモリギの声に再び我に返ったタイラーは、マモリギを見返して言いました。

「もう遅いさ。神様のドングリはメフィスが動物どもを牛耳って今頃、取りつくしているはずだ」


タイラーよ

諦めるのはまだ早い

多くの動物により奪われたテルメアの実は

多くの動物たちの手助けにより取り戻せばよいのです


マモリギは今度は優しくタイラーに語り掛けます。

「無理だって!森の動物どもは俺の言うことなんて聞きやしないさ。それに・・」

タイラーは吐き捨てるように言いながら、最後に何かを言いかけて、言葉を濁しました。

タイラーは、ずっと孤独で生きてきました。

天涯孤独です。

生まれたときから両親はおらず、仲間もいません。

だから、独りで生きるために知恵を磨き、誰に対しても屈しない姿勢を貫いてきたのです。

そのため、他の動物たちに協力を仰ぐとか、お願いするということが苦手でありました。

どうにも素直になれないのです。

素直になるということは、タイラーにとって自分を弱くさせ、遂には敗北を意味しています。

でも、心の中ではそんな風に感じてしまう自分が嫌いでした。

孤独でいることでしか自分の安寧を得られない。

なのに心の奥はいつもそんな自分の状況に騒めいているのです。

タイラーは自分の心と向き合うのが嫌でした。いえ、怖かったのです。

それを見透かしたようにマモリギはまた、語り掛けてきます。


タイラーよ

孤独な狐よ

お前は本当は孤独であることが辛いのだろう

今こそお前の孤独を解き放つ時です


タイラーはマモリギの言葉を聴いて、再び、胸中に自分の過去の記憶がよみがえって来るのがわかりました。

辛く寒い冬のこと、一人ぼっちで歩きさまよったこと。

いつも見る暗闇の中で自分だけが取り残されてしまう恐怖の夢。

タイラーの心にマモリギの言葉は入ってきません。

孤独が辛い・・?

マモリギの言葉はタイラーの矜持を傷つけていました。

孤独なんかに負けたくない。

タイラーはいつもそうやって虚勢を張って生きてきたのです。

それを否定されたら、自分のわずかな寄って立つところを失ってしまう。

そんな不安定な気持ちになったのです。

「お前なんかに・・・」

タイラーは呟くように言い放つとマモリギをにらんで言い放ちました。

「お前なんかに俺の何がわかる!」

その声は怒りと哀しみがないまぜになったように震えていました。

「世界の終わり?知ったことか!!こんな世界は滅んじゃえばいいさ」

タイラーは言い捨てると鬱蒼とする森の中へと逃げ込むように走っていってしまいました。

マモリギは、そのタイラーの後姿を遠巻きに眺めるように光り輝いていましたが、最早、何も言葉を発することはありませんでした。

そして、マモリギは一晩の奇跡を終えたかのように光っていた輝きは灯を落とし、いつもの物言わぬマモリギへと戻っていったのでした。


・・・続く


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神様のドングリ- 予言の兆し その2 -

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神様のドングリ- 予言の兆し -からの続き。

お腹を空かせたタイラー。

歩き疲れてマモリギにもたれかかる様に眠る中、ふと何かの気配に気づきます。

辺りを見回しても動物の姿は見当たりません。

しかし、よく見るとマモリギが光を発してタイラーに語り掛けていることに気づきます。

目を丸くするタイラー。

果たしてマモリギは何をタイラーに伝えようとしているのでしょうか。

・・・ ◇◆ 予言の兆し その2 ◆◇ ・・・

マモリギは静かにサワサワと枝を揺さぶりながら、まるで綿帽子のような白い光を帯びながらタイラーを見下ろすようにそびえ立っています。

タイラーは茫然と口をぽっかり開けて、マモリギを見上げています。

まだ、夢から覚めていないのだろうか?

タイラーはそんなことを考えながらも目の前で起こる出来事をどう受け止めて良いのかわからずにいます。

光を帯びるマモリギも十分に幻想的で夢見心地な感じではありますが、それに輪をかけて樹木が語り掛けてくるという奇想天外な状況にさしものタイラーもあっけにとられてしまっているのでした。

そんな茫然自失のタイラーに構うことなく再び、マモリギが語り掛けてきました。


タイラーよ

孤独な狐よ

あまり時間は残されていません

わたしの話を良く聞くのです


マモリギの声に我に返ったタイラーは、今度は目の前の起こっている現象を少しだけ受け止められるだけの冷静さを取り戻しました。

「ちょっと待ってくれ!あんた本当にマモリギなのか?一体、さっきから何を言っているんだよ!!」

タイラーは光るマモリギに向かって叫ぶように言いました。


タイラーよ

わたしはお前たち動物がマモリギと呼ぶもの

わたしは長らくお前たちとお前たちの世界を守護してきたもの

しかし、今その時が終わろうとしている


マモリギは静かに語り掛けてきました。

「確かに昔からの言い伝えでは、あんたがこの世界を守ってるってことになっているけど。。」

タイラーは少し顎に手をやり考え込むような姿勢で呟きました。

「だけど、それは単なる言い伝えだろ?確かにたまにあんたの木陰で休んだりさせてもらっているが、それだけで世界を守っているなんてちょっとおこがましくないか?」


タイラーよ

お前の食す木の実は大地の恵みです

お前の眠りを支える草木は自然の恵みでもあるでしょう

この世を安定させ生きとし生けるものが育みやすい環境を整えている力を何とする

全ては働き合い調和をして成り立つもの

当たり前に存在する恵みも環境もあるものではないのですよ


マモリギはタイラーを諭すように言いました。

タイラーは少し言われていることの意味をかみしめながら、それでもまだ納得がいかない様子です。

「それはそうだろうけど、だからって、あんたがこの世界を守っていることにはならないだろう?あんたは大樹で昔から動物たちに尊重されてきたのかも知れないが、全てをあんたが与えているような口ぶりはどうかと思うぞ?」

少しだけいつもの意地悪いタイラーの言いようが姿を現します。

どんなに超常的な現象を見せられてもそれに屈するのはタイラーのプライドが許しません。


タイラーよ

確かにわたしは万能ではない

全てを私が与えたわけでもない

されどわたしの力が衰える時

この世界の調和が崩れる時なのです

良く聞ききなさいタイラーよ

私の力は今、急速に衰えつつある

時間がないのですよ


少しだけマモリギの穏やかな声に焦燥的な響きが混じり始めました。

それを聞いたタイラーも少しその不吉な声の響きが気になりました。

「それはどういう意味なんだ?あんたの口ぶりでは、全てをコントロールしていたのがマモリギであるあんたの役目だってことは何となくわかったよ。でも、何で突然、あんたの力が衰えて世界が終わるなんてことになるんだよ?」

タイラーはマモリギの言うことを少しずつ理解しつつも、まだ把握できない部分に言われえぬ不安感のようなものを抱いています。

最初にマモリギが言っていたお前は何故この世界を滅ぼすことに手を貸したのかという言葉も気になります。

そもそも、なぜ今になって、長年沈黙を続けてきたマモリギが寄りにもよってこの自分に語り掛けて妙なことばかり口にするのか。

タイラーの訝しみは益々、深まっていきます。


タイラーよ

わたしが力を振るえるのはテルメアの実があってのこと

テルメアの実が失われればわたしの力もまた失われる

テルメアの実を取り戻さねば、この世界の調和は崩れて失われることでしょう


「なんだよそれ!テルメアの実?聞いたことがないぞ。それと俺様と何の関係があるっていうんだ。」

タイラーはまるで濡れ衣を着せられたかのようなそぶりでマモリギに訴えました。


タイラーよ

お前は忘れたのか?

動物たちを焚き付けテルメアの実を収奪させたことを

お前が「神様のドングリ」と呼んだ木の実のことを

忘れたというのか


マモリギの言い放つような声にタイラーは再び身体が金縛りにあったかのように硬直するのを感じます。

またしても、耳にする神様のドングリという言葉。

痛いところを突かれたようにタイラーはさっきまでの勢いがそがれたように言葉を失ってしまいました。

最早、神様のドングリという言葉はタイラーにとって大きな古傷のように心を痛ましめるものになっていたのです。

・・・続く

神様のドングリ- 予言の兆し その3 -へ続く

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神様のドングリ- 予言の兆し -

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神様のドングリ- マモリギ その8 -からの続き。

尊い小さな命が召された時。

ただ慟哭だけがその場を支配しています。

ドリの死に後悔と悲しみと様々な思いを抱くバリス。

そんな冷たく重たい時間が過ぎ去ってから、数日後のこと。

マモリギの傍をお腹を空かせて肩を落とした狐の姿があります。

・・・ ◇◆ 予言の兆し ◆◇ ・・・

美しい樹木やたわわに実る果実でいっぱいだった山道。

しかし、今はあちこち樹木はなくなり、マモリギだけが平原の中に寂しくそびえ立っています。

地面も穴だらけであった場所にようやく小さな草が生えてきていますが、食べられそうな植物は見当たりません。

時折、キューっという小動物の鳴き声のような音をお腹が立てると狐のタイラーはなだめるように摩りました。

「腹減ったな・・・」

弱々しい声で呟きながら、同時に自分のしたことを振り返っています。

神様のどんぐり。

最初は悪戯半分で思いついた嘘でした。

でも、それを利用して森の動物たちを支配しようと企むものが現れるとは夢にも思っていなかったのです。

あの岩窟の王者メフィスとの対峙でタイラーは自分自身の浅はかさを痛感させられずにはいられませんでした。

結果、タイラーは自分が主食としていた木の実のなる樹木も安心して暮らせる住処も奪われることになってしまったのです。

しばらくは、あちこちを歩き移動しながら、食べ物や寝場所を探してきました。

しかし、タイラーにフィットする食べ物も住処もそう簡単に見つかりません。

歩き疲れて、結局、気づくとマモリギの傍を歩いていました。

この世界で一番大きいといわれる樹木。

世界の守護神であるマモリギ。

タイラーは今まではそんな言い伝えを耳にするたびにバカにしたような気持ちでいました。

物言わぬ樹木が一体何を守るというのだ・・と。

でも、今は歩き疲れてマモリギに寄りかかるように背中を持たれて一眠りしたい気分でした。

そして、実際にマモリギにもたれかかると非常に気持ちが良く何だか自分自身が抱きしめられて、守られているような気分になってきました。

「マモリギ・・か。まんざら嘘でも・・」

気持ちの良さから何かをつぶやこうとしましたが、それよりも前に瞼が下りてきて、心地よい睡魔の誘いに導かれて、眠りに入ってしまうタイラーなのでした。

タイラーが眠りの淵に落ちてから幾ばくの時間が流れたでしょう。

タイラーはふと何かの気配を感じて、目覚めました。

キョロキョロと周囲を見回してみましたが、他の動物の気配はありません。

気のせいか。

そう思おうとしたときに何か光のようなものがタイラーの顔を直撃しました。

思わず顔をのけぞらせて、手で光を遮りながら、光の発する正体を見極めようと目を細めて睨みます。

光を発しているのはマモリギでした。

樹木全体が光のベールに包まれています。

「これは・・・夢か?」

タイラーは自分はまだ寝ぼけているのかと頭を左右にブルブルふってからもう一度、マモリギを見ました。

さっきよりかは視界はハッキリとしていますが、やはりマモリギが光っているのを再確認しました。


タイラーよ

孤独な狐よ

無知なるものよ

お前は何故この世界を滅ぼすことに手を貸したのか

どこからともなく聴こえてくる声があります。

タイラーは再びキョロキョロと周囲を見渡しますが、やはり動物の気配はありません。

一体、どこから声が・・・

タイラーが訝しんでいると再び声は語り掛けてきます。


タイラーよ

お前の探しているものは今目の前にいる

先入観がお前を盲目にしている

よく見据えて受け入れるのです


耳を澄ましても、どこから聴こえてくるのかは分かりません。

ここにいるのはタイラーだけ。

いや、タイラーとマモリギだけなのです。

「まさかマモリギが・・?」

一瞬、そんなことが頭に浮かびますが、タイラーは苦笑いして心の中でそれを否定しました。

そんな馬鹿な。

樹が喋るわけがない。

そんなことをタイラーが考えていると突如、マモリギが再び光を強く放ち、樹木全体が揺れて、枝葉がわさわさと音をたてました。

突然のことにタイラーはビックリしてマモリギを凝視すると再び声が聞こえました。


タイラーよ

罪深きものよ

孤独なる哀れなものよ

括目しなさい

耳を傾けなさい

世界の終りを止める最後の機会を逃さぬように



今度はさしものタイラーも絶句してマモリギをただ茫然と見据えています。

目の前で信じられないことが起こっているのをみて動けないでいます。

タイラーはごくりと固唾を飲み込むと呟きました。

「なんてこった。樹がしゃべってやがる」


・・・続く

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神様のドングリ- マモリギ その8 -

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神様のドングリ- マモリギ その7 -からの続き。

土煙を立てて突き進んだ勇ましい戦車は、今や哀れに横たわっています。

上に載せていた大岩は転げ落ちてしまっています。

一瞬の静寂。

泣きまわるリスたち。

ドリはピクリとも動きません。

・・・ ◇◆ マモリギ その8 ◆◇ ・・・

戦車が転倒し哀れな姿をさらし、マモリギを打ち倒すという目的が完全に失敗した一部始終を丘の上の動物たちも目の当りにしました。

固唾を飲み込み、まるで石になってしまったかのように動物たちはその場を動けませんでした。

一体、何が起こったのか。

段々、状況が掴めてくると動物たちの中からさざ波が広がるように、動揺する声が沢山、聞こえてきます。

「・・・山猫はどうなったんだ?」

「まさか、死んでしまったの?」

「ひどい・・・」

不安げな声色から、段々と怒りのような声、ついには泣き出す動物たちも現れて、丘の上は徐々に騒然となってきました。

兎は、真っ青な顔をしてプルプルと震えています。

身体中、やな汗をかきながら、何かぶつぶつ言っています。

「なんで・・・普通、逃げるだろ・・俺は悪くない・・だって、メフィス様が・・」


そんな混乱した兎を突き飛ばすようにバリスは掴みかかりました。

「なんてことをしてくれたんだ!なんてことを!!」

突き飛ばされるような形になった兎は情けない顔をして地面に転びました。

兎の上に馬乗りになり、殴ろうとするバリス。

しかし、そっと肩に置かれる手がバリスを一瞬の狂気から目覚めさせました。

「そこまでにしておくのだ」


猪がバリスを制止します。

「それより、今は他にすべきことがあるじゃろう・・?」


そう諭されてバリスは我に返り、掴んだ兎の身体を離すと、血相を変えて丘を駆け下りていきました。

兎はそのまま倒されたまま、まだ、ぶつぶつ言っています。

その姿を猪は憐れむように見据えると、ため息をついて言いました。

「もう、お前さんの言うことは聞けないぞい。ワシは神様のドングリ探しは、もう降りる。」


猪は、大きな身体をのそりのそりと動かしながら、兎の元から離れていきました。

他の動物たちもそれに呼応するかのように半数はその場を去り始め、もう半数はどうしたものかわからずにただオロオロするばかりです。

そんな丘の状況を尻目にバリスは丘を駆け下りていきます。

「ドリ・・・ドリ!!」

叫びながら、途中の小石につんのめり、バリスは丘の上を転がり倒れてしまいました。

全身、打ち身や擦り傷を作りながらも、転んだ身体をすぐさま起こして、ドリの元へと駆け寄ります。

ドリの周りにはリスたちが泣きながら走り回り、難しい顔をした猿が佇んでいます。

バリスが近づくと猿は悲しそうな顔をして横にかぶりを振りました。

「そんな・・・ドリ!しっかりして、目を開けて!!」

ドリのすぐそばに跪くようにへたりこむとバリスは、何度も悲痛な声でドリに話かけます。

しかし、ドリはボロ雑巾のようになり、ぐったりとして動きません。

あの戦車を一人で止めるなんて、そんな無茶をなんで・・・

バリスはドリの身体の上にポタポタと涙のしずくを垂らしながら、悔やんでも悔やみくれない思いで胸が張り裂けそうな想いで動かぬドリを見守っています。

「ドリ!しっかりするんだ!一緒に村に降りて暮らすんだろ?新しい生活を始めるんだろ?」

バリスは泣きさけぶとドリの身体が少しだけ動きました。

心もとないおぼつかない手でドリはゆっくりとバリスの顔に手をやったのです。

そして、薄らと開けた瞼の中の瞳には、ドリの命の炎が消えかかっていること表すような弱々しい光が揺らめいています。

「バリス・・・ごめんね」

かすれた声でドリは言いました。

「ドリ!しっかりして!家に帰ろう。きっとこんな傷すぐになおる」

「泣かないで。。私はいつでもマモリギと一緒にあなたの傍にいるから」

「もちろんだ!当り前さ。俺はどこにもいかない。二人でまた今まで通り静かに暮らそう。ドリがいれば他には何もいらない」

必死に訴えるバリスにドリは最後の力を振り絞るかのように微笑んで言いました。

「お願いがあるの。私が死んだら身体をマモリギの見える場所に埋めてほしい。いつでもこの世界の動物たちを見守れるように」

「何を言ってるんだ!こんな傷で死ぬもんか!!ドリがこんなことで・・」

「バリス・・誰も傷つかない、皆が・・幸せに暮らせるように・・」

最後の生命の輝きスパークさせるように紡ぎだされたドリの言葉はたどたどしく、かすれていて良く聞き取れません。

しかし、それがドリの生涯最後の言葉となったのです。

そして、ドリは静かに眠るように息を引き取ったのでした。


・・・続く

神様のドングリ- 予言の兆し -へ続く


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こんにちは!天心と申します。
守護霊アドバイス等の取次鑑定を行っています。
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