神様のドングリ- バリスとドリ -

神様のどんぐり- はじまり -からの続き。

村の長老は静かに薪の炎を見つめています。

動物たちは先程のお祭り騒ぎはどこへ言ったのかというくらいに静まり返って長老の言葉に耳を傾けています。

ただ、炎に炙られる薪がパチパチと弾ける音だけが周囲に木霊しています。

しばらくの沈黙の後、村の長老が語り始めたのは、今から百年以上も前のまだ、沢山の動物たちや植物が広がっていたとても穏やかな時間の流れる時代のことでした。


・・・ ◇◆ バリスとドリ ◆◇ ・・・


この村から少し離れたところに昔は豊かな水量を誇る川が流れていたほとり。

静かに暮らす二匹の山猫がいました。

オス猫のバリスとメス猫のドリです。

ふたりはとても仲の良い山猫でした。

村里にはあまり降りてくることはありませんでしたが、ふたりはとても幸せに暮らしていました。

川に入れば飲水には困らず、川魚を取って食べたり、近くの森を散策すれば、木の実を採取することもできます。

地味な暮らしではありましたが、ふたりはとても満足していました。

「ねえ、ドリ。今日も沢山の木の実を拾ってきたよ。」

バリスは藁で編んだ籠に沢山の森の木の実を入れて、ふたりの住む洞穴へと帰ってきました。

「まあ、そんなにふたりで食べきれないね」

ドリが籠一杯の木の実を抱え込んだバリスを見て微笑みかけます。

「食べきれなきゃ村里のものたちに何か他の品と交換してもらうさ」

バリスは言うと、木の実の入った籠を樫の木で作られたテーブルの上に置きます。

バリスは時々、村里へ降りて行き、森で手に入れた木の実や薬草、それから川でとれた魚などを他の品物と交換してもらっていたのです。

藁の籠もテーブルも皆、村里のものたちから交換してもらったものでありました。

「ねえ、バリス。あのね・・」

「わかってるって」

何かを言いかけるドリの言葉を遮るように笑顔を向けます。

ドリはバリスが村里に降りていくのをいつも心配していました。

バリスもドリが心配するので村里に降りていくのをなるべく控えていたのです。

バリスにとってはドリが自分の生きるためのかけがえのない存在であり、ドリもまたバリスを失うこと以上に怖れていることはありませんでした。

「わたしは今の生活でとても幸せ。だからね。あまり無理して欲しくはないの」

ドリはバリスの手を握って諭すように言いました。

「無理なんかしてないさ。村里に行くのは、たまたま、木の実を取り過ぎちゃったからさ」

バリスはそう言ってまたドリの心配を解こうと微笑みかけます。

ただ、その言葉とは裏腹にバリスには別の思いもありました。

ふたりの生活に十分に満足しているという点においてはバリスも同じ思いでもありました。

しかし、本当は出来ればもっとドリに良い暮らしをさせてあげたいという気持ちもあったのです。

ドリはいつもバリスの心配だけをしていましたが、バリスはドリにもっと幸せになって欲しいという願いを持っていました。

そして、その思いは日に日に大きなものへと変わっていきました。

今回の藁の籠一杯の木の実だって実を言えば、かなり苦労して集めたものでもあったのです。

村里に行けば、より豊かになるための品物を手に入れることができるのです。

バリスはドリに心配をかけてしまうという後ろめたさもありましたが、時々、無理をすることもありました。

それにしてもとバリスは思います。

なぜ、ドリはそこまで村里に降りていくことに反対するのだろう。。

そんなことを考えているとドリが何かを思い出したように

「あっ!そうだ。あのね、実は今日はバリスにプレゼントがあるの」

ドリの手のひらには小さな貝殻とそこに麻ひもを通して作られたネックレスが握られていました。

「川で拾った貝殻で作ってみたの」

ドリは嬉しそうに二つお揃いの貝殻を両手でぶら下げるようにしてバリスに見せました。

「すごいきれいだね」

「バリスと私のお揃いね♪」ドリは言うとバリスの首にネックレスをかけました。

「ありがとう」バリスは笑っていうとドリも釣られて笑顔になります。

その時です。今まで快晴を誇っていた青空に見る見る内に黒い雨雲が姿を表したのです。

「これはひと雨くるかな」バリスは曇天の空を洞穴から顔を出し見上げて言いました。

そして、ほとんど間を開けずにバリスの予想通り大雨が降り始めたのです。

空には稲光が走っています。

ゴロゴロと不穏な雷鳴を轟かせながら、一筋の稲妻がどこかに落ちていきました。

「どこかに落ちたな」とバリス。

「あれはマモリギのあるあたりね」ドリは不安そうな顔で荒れ狂う外の様子を洞穴の奥からじっと見据えています。

「すぐに通りすぎるさ」

「でも、何か嫌な感じがする」とドリはいつにも増して不安な表情を浮かべています。

バリスはそんなこと気のせいさと言おうとして、あることを思い出して口をつぐみました。

どこで聞いたのか、誰が言い出したのかわからないのだが、マモリギに災禍が及ぶときこの世界にも大きな厄災が及ぶという言い伝えがあることを思い出したのです。

バリス自身、そんな言い伝えを信じていたわけではないのですが、ドリの不安げな顔色を見ていて、どこか自分自身も理屈ではないところで何かが起こりそうな予感のようなものを感じたのでした。

「何も起こらないといいのだけど」

ドリの怖れと不安の入り混じったつぶやきが、これから起こることの予兆であったことなど、まだ、この時は誰も知り得るよしもありませんでした。


・・・続く

神様のドングリ- 孤独な狐 -へ続く


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